SEIRA UCHIDA

撮影:小山田邦哉
写真提供:青森公立大学国際芸術センター青森

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「余白書店のバーチャル本棚」

2023/ミクストメディア(本の3Dデータ・背表紙のスキャンデータ・QRコード・モニター・木材・Raspberry Pi)

木枠とモニターで構成された本棚に、本の背表紙が並んでいます。それらの背表紙についている二次元コードを読み込むと、人と深く関わって様々な痕跡だらけになった「余白本」の3Dデータが、テキストとともにあなたのスマートフォンに呼び出されます。作者は、書き込みやシミなどのある古本を、読者が創作した一点物のコレクター商品「余白本」と価値づけて販売する《余白書店》という活動を行っています。この《バーチャル本棚》には、「余白本」を3Dスキャンしたデータが、持ち主や提供者のインタビューを記録したテキストと共に収められています。

日本では長く使った道具を供養するために、人々が塚や墓を作る慣習があり、作者はこれにインスピレーションを得て本作を制作しました。古本屋でも沢山のメモや書き込みがされた「余白本」は引き取られることなく、いずれその生涯を終えます。持ち主もバラバラな、様々な人生に関わった本たちが、一つの家族の本棚のように、隣通しで並びます。二次元コードを読み取るスマートフォンは、現代人にとってプライベート空間ということもできます。情報化社会では、似た意見が目に入りやすく、他者に対して不寛容になりがちだと言われます。バーチャル本棚は、各々のプライベートな空間に他者を招き、本を通して様々な他者を想像することを促しているのです。

今回は《バーチャル本棚》とともに、本に挟まっていた物やエピソードにまつわる「しおり」が購入できるガチャガチャも展示します。

札幌フコク生命越山ビル sitatte sapporo B1(ステップガーデン) 北2西3

内田聖良

SEIRA UCHIDA

1985年埼玉県生まれ。情報科学芸術大学院大学 [IAMAS]修士課程修了。アーティスト、また、自身をポスト・インターネット時代のベンダー(Bender)と称する。AmazonやYouTubeなどのサービスも活動の場として取り込みながら、与えられた使用法に問いを投げかけるようなアプローチをとる。近年は民話や信仰のリサーチに基づいて、物語の流通や共有についての作品を制作する。

〈主な展覧会〉

  • 「VOCA展2023 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」 (上野の森美術館、 東京、2023)
  • 「多層世界とリアリティのよりどころ」(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC] 、東京、2022)
  • 「バーチャル供養講」(国際芸術センター青森(ACAC)、青森、2021)など。

コンセプト、3Dデータ制作、ウェブサイト制作、背表紙スキャン: 内田聖良

木枠制作:加藤直哉(ISUKA)

木枠設計図制作:村上美樹

ウェブサイト制作協力:宮本一行

制作協力:HAUS(Hokkaido Artist Union)、余白本提供者の皆様

Q&A

作品を作るときの源はなんでしょうか?

日常生活で感じる違和感。それはなぜかを考えて、その当たり前の価値や物語に問いを投げかけるための作品の種にします。

街中で作品を展示するにあたり、意識したり、気にかけたことことはなんでしょうか?

映像の最後に出てくるシーンですが、図面を元に、展示会場に作品が展示してある様子を挿入してあります。イベントが終わっても、映像を見かえしたり、買い物などで通り過ぎたときに、この展示のことを思い出してもらえればいいなと思います。

最近、気になっていることは何ですか?

「フェミニスト・テクノロジー」というフェミニズムとメディアアートを合わせた考え方が気になっています。自分でも応用してみたいです。また、東北に6年ぐらい住んでいたので、スピリチュアルや民話に関することも興味を持っています。信仰の儀式などは、見えないものとの関係性をデザインするという意味で、XRデザインだなと思っていて、学ぶことが多いです。

今後、挑戦してみたいことを教えてください。

最近は、VR作品を作ることが多かったのですが、機材が高額だったり、体験に制限が多いこともあり、比較的制限から自由なp5jsなどのプログラミングを用いたジェネラティブな作品に挑戦してみたいです。